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行きたいお店と、選ぶ店

コロナがもたらした被害は、今飲食業会を大きく揺さぶっています。
これまで多大な税金を納め、何万人という人を雇用し、幅広い層への雇用機会と基盤を作り上げてきた飲食業会の、貢献に値してきたような企業が次々と窮地に追い込まれています。
そこに科学的根拠は本当にあるのか?一律の保証というあまりの雑さや、政府の一方的なやり方に、見ていて本当に残念で仕方がありません。

そうは言っても、実際に、コロナ禍での自分自身の外食の頻度減や、選ぶお店も変わってきてしまっていることは事実で、 行きたい店と、選ぶ店とでも、これまでとはイメージが違ってきています。

私は、職業柄、常々行きたいお店がたくさんで、手帳のメモといえば、ほとんど行きたい店リストのようなもの。 そこには、食の探究心や、一緒に食事する人や、評判など、いろいろな要素からそのお店へ行くという「楽しみ」が含まれ、おしゃれして外で誰かと会って「外食」することは、手軽な余暇活動であり、楽しみごとでした。
旅行よりも、頻度が高くて、気軽で、私だけでなく多くの人にとって楽しみで、また、励みだったと思います。 今でも、全く外食しないわけではないし、友達とランチしようと思えばできます、でも不安や気遣いもやっぱりあって、 私にとっての行きたい店リストは→いつかいけたら行きたいな店リストになり、行こうという意思が今はぼんやりしてきています。

そんな中、それでも外食はします。そしてここ最近外食した店は素晴らしかった印象が強いのです。
まず、味が濃いな、とかちょっと高すぎるなと感じた店、には評判が良くても便利でも足が向かなくなりました。 限られた外食の機会のような気がして、素晴らしいと思う店しか選択肢に入ってこないように思います。
少し高くても、ここのこれが美味しい、ってわかってるお店。 清潔で、サービススタッフがやさしいお店。無くなってほしくないお店。夫と一緒に、時には子連れでも行ける店。 少し足を伸ばしてでもどうしても食べたいと思う料理がある、そしてその期待を裏切ることの無い信頼できるお店。 今はそういうお店に行きたいと思うし、親切で安心なサービスを受けて、楽しかったと思える。
こうやって字面にすると、、ものすごく根本的で当たり前ですが、そうなんです。

飲食店には非日常のエンターテイメント性ともう一つ、大きな柱があって、 それは、“癒し”だと私は思ってます。 サービスを受けることの心地良さ、安らぐ空間、道具使い。 美しく盛りつけられた温かなスープ、ほどよい味付け、手づくりのやさしさ。

つい一昨日久しぶりに美味しいお蕎麦を食べたくて事務所近辺から少し足をのばして麻布十番まで。
ここのお蕎麦がたべたいな、と、いつもよりもだいぶ遠出をした気分でしたが、 わずかな食事の時間に、こんなに癒されるのか、と私自身、久しぶりに「美味しい癒し」を体験しました。
変わらない汁の味、香り、天麩羅の絶品さ。「今日来れて良かった。嬉しかった。」それ以外の言葉では表現できない特別な満足感がありました。
ミシュランの3スターの価値として、そのお店に行くためだけに旅をする価値があるかどうか。というジャッジ項目があります、 それはもしかしたら大げさかもしれませんが、選ばれる店とは、結局そうなんだと思います。
来てくれたお客様に、「今日来れて良かった。嬉しかった。」と毎回満足に感じてもらえるかどうか。です。その繰り返しができるかどうか何だと思います。
プロデュースをする際にも、私たちはもっとスタッフやシェフとの対話を増やし、このスタンスについて調整し、丁寧に研究していく必要があります。

これまで、お店を企画する時に、 “楽しい” “美味しい” “かっこいい” を3大テーマにしてきましたが、 近年では“美味しい” “嬉しい” “やさしい”をキーワードに私自身も変換しつつ、自分の仕事も、また同じく選ばれるように、そのスタンスを感度よく柔軟に構えていかねばならないなと感じます。

そして、また外食という“楽しみ”が、しばらくは他のものにスライドしたり、集うことを我慢しても、 きっと必ず、この「楽しみごと」を求めて、人は働き、服を買い、見栄もはり、そこで満たされたいと、また安心が戻ればすぐに求めるはずです。
おしゃれして外で誰かと会って、という余暇活動のためのレストランも、一人でひっそり楽しむお店も、家族でささやかに訪れるお店も、多くの場合楽しみな場所であり、大切な余暇活動であることは明らかで、その欲求と解放は、経済的にも大きな活力になるでしょう。
もちろん今は健康を最優先、これは当然で我慢せざるおえないことも理解できます。 しかし、この状況に耐えうるように、国は飲食業大手、中小も含む外食産業を絶対に見捨てないでほしい、と思います。

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