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老舗の力

自粛ムードも広く和らぎ、そろそろ外でお食事しましょう。ということで、我が家も久しぶりに居住区を抜け出して、レストランを目指しました。
久しぶりのお出かけランチに選んだのは、「鰻屋」さん。
“父の日”で、主人の大好物ということや、家では決して再現できないプロの味の一つですから。
訪れたのは、私が東京でいちばん好きな鰻屋さん「野田岩」本店。

込む時間を過ぎた1時くらいに到着。
それでも4組待ち。
1階を仕切る2人の仲居さん、子ども連れなので、「暑くないか」「東京タワーあそこからよく見えますよ」 いろいろと待つ間も気にかけてくれる。別館に移動しなくても良いように配慮してくれる。さらっとしてて優しい、これが東京の老舗。働く普通のおばちゃんがとてつもないプロに見える、かっこいい。それが東京の老舗の粋な風格の一つ。久しぶりのこの感触にやっぱり来てよかった、と食べる前にすでに思ってしまったのです。

飲食店は、働く人間全てがプロである必要はない。
未経験者も、初心者も、やる気次第、いろいろな人を迎え入れる懐を持つのが飲食店です。
だから、初心者がいて当然です。「野田岩」さんのような老舗、ホテル、レストラン、旅館さん等もそうですが、
初心者のスタッフには必ず「見習中」の印や、着ている服装で違っていたり、スタッフさんの格がお客さんに公然と分かるようになってます。
お客も、そのつもりで接するのがマナーだし、そうやって初心者は初心者です、そしてプロがその管理をしてます。という中でのサービス。このやり方が、結局働く方の保護にもなるし、お客側にもサービス全体の心地の良さをもたらしていると思います。

昨今の飲食店では、そのようなことをせずにいるお店も多いですが、私は、お店の企画やブランドづくりを担当させていただく際に、細かいことですが初心者スタッフには、たとえバッジでもいいですからそれがわかるようにすることは意外と大事ですよ、とお伝えしてます。
当然時給も変えて良いと思います。分かりやすく言うと、とくに海外ではチップをもらえる立場の人と、そうでない人と見れば分かるようになってます。この人は皿を下げているだけだな、この人に言っても仕方ないな。と。これは、結局お店全体のサービスの質をどう見られるかということに、直接的でなくても影響して来るからであると思います。

前置きが長くなりました。
さて、いつ以来でしょうか、久しぶりのこちら、
「野田岩本店」のお料理、うな重は、すっきりと美しい。格好いい。
凛として、何も変わらない。
お重箱の図柄の楽しさ。サービス、プロの手仕事の中で過ごす居心地の良さ。
老舗ってすごい。プライドと優しさ、丁寧な日々の繰り返し、ひたむきな仕事。
実際はそそくさと食べて帰った、お昼ごはんのひとときでしたが、自粛の家ごはんで乾ききっていた私の心に潤いをもたらしてくれました。

飲食店は、サービス業です。レストランは、サービスあってのもの。
見えない女将さん、大将の心意気あってのスタッフの姿勢、そして丁寧な一皿一皿なんだとあらためて。

一時期は観光客でいっぱいだとかで足が遠のいてました。
子連れで来るのは初めて、主人が変に緊張する店を嫌うのもあり、大丈夫かなと思ってましたが、
そんな心配は、この小さくとも、大きな老舗の力強さの前では無用でした。
「ご馳走さま、また来ます」と呟いて店を後にした、
楽しい父の日の食事でした。

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